大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)745号 判決

上告人(原告) 大沢泉

被上告人(被告) 特許庁長官

一、主  文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

二、理  由

上告代理人弁護士和久井宗次、弁理士木戸伝一郎、同山田勝三の上告理由は別紙記載のとおりである。

上告理由第一点について。

論旨の縷々主張するところは、要するに、上告人の発明した製粉機が特許法一条にいわゆる「新規ナル工業的発明」に該当するというのである。この点について、原判決は「(一)特許第一五九九一〇号製粉機、(二)特許第一七三五九三号製粉機、(三)登録実用新案第一八三七三号製粉機、(四)昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号製粉機の各記載事項を綜合して各別発明思想を要することなく設計によつて容易に連想し得る程度のものと認定する。」と判示しているのであつて、原判決が右各製粉機及び本件製粉機について認定するところによれば、原判決の右の判示は正当であり、本件発明は特許法一条にいわゆる「新規ナル工業的発明」に該当しないものと解するのが相当である。論旨は大審院の判決を引用して原判決が先例に違反すると主張するのであるが、ある発明が特許法一条の「新規ナル工業的発明」にあたるかどうかは、具体的場合によつて異るのであるから、引用の判決中に発明の新規性を認めたものであり、本件の場合これを認めなかつたからと言つて、先例に違反するものということはできない。

上告理由第二点について。

論旨は、特許抗告審判の審決取消請求の訴訟においては、抗告審判の審理に際して提出されなかつたあらたな事実の主張、立証はゆるされないというのであるが、原審が事実審である以上、審判の際主張されなかつた事実審決庁が審決の基礎としなかつた事実を当事者が訴訟においてあらたに主張することは違法ではなく、またかかる事実を判決の基礎として採用することは少しも違法ではない。

以上説明のとおり論旨は理由がないから、本件上告はこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条を適用して、裁判官全員一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

(裁判官 霜山精一 栗山茂 小谷勝重 藤田八郎 谷村唯一郎)

上告代理人弁護士和久井宗次、弁理士木戸伝一郎、同山田勝三の上告理由

第一点

一、上告人(特許出願人・抗告審判請求人・原告)は自己の発明に係る『関係的に回転する一組の臼盤の一方に、穀粒が進入する中心部においては疎間隔に、そして臼盤の周囲に至る程密な間隔を保つて内面に多数の圧砕球を同心環状位置に配置するとともに、他方の臼盤の内面にはその周囲にのみ前記圧砕球の環列間に当つて圧砕球を配置し、これら圧砕球を各臼盤から一部突出させて各自その位置において転動自在に保持し、各その頂部を相手の臼盤面に圧接するようにした製粉機』につき特許標準局に対し昭和二十二年八月二十二日特許出願をした(特許標準局は昭和二十三年八月一日から特許局となり、同二十四年五月二十五日から特許庁となつている)。同局審査官は昭和二十二年特許願第五八五四号事件として審査の結果、昭和二十三年五月十八日『本願は、これを拒絶すべきものとする』との拒絶査定をなした。その出願拒絶の理由とする所は『本願の発明はその出願前帝国内に頒布された刊行物(特許第一五九九一〇号明細書並びに図面、甲第一号証)に容易に実施することができる程度に記載されたものであるから、特許法第四条第二号の規定によつて同法第一条の新規な工業的発明と認めることができない』というにある。

上告人は右拒絶査定に対し、抗告審判を請求し同局抗告審は昭和二十三年抗告審判第一五九号事件として審理の結果、同年八月十三日前記と同一理由を以て、上告人の『抗告審判の請求は成立たない』旨の審決をなした。上告人は更に右抗告審決の取消を求めるため原審・東京高等裁判所へ出訴(特許法第百二十八条の二)した。同裁判所第二民事部は昭和二十三年(行ナ)第一五号事件として審理の結果、昭和二十六年七月三十一日、上告人(原告)の請求を棄却する旨の判決をなした。原審の判決は、その「理由」で次の如く説示する。曰く『本件昭和二十二年特許願第五八五四号製粉機と特許第一五九九一〇号製粉機とを対比するときは、両者はボール式製粉機であつて関係的に回転圧接する一組の臼盤の間に多数の圧砕球(鋼球)を備え穀粒を回転盤の回転に伴い中心部から外側に移送しつつ圧砕球で圧砕するものであることに於て一致し、又圧砕球(鋼球)自体もその位置で転動自在に保持しその頂部を臼盤面に圧接したものであつて、圧砕球は圧砕作用をなすのみで衝撃によつて製粉を行うものではなく、両者は共に臼盤と球との接触で球の回転によつて粉粒を圧砕するものであることは明白である。唯前者特許願製粉機における圧砕球は同心環状に臼盤から一部を突出し、各自その位置に於て転動するように保持されその頂部で相手臼の臼盤面に圧接して原料を圧砕するようになし、且つ圧砕球の配置として中心部から外周に至るに従い順次疎より密となし、外周の近くでは回転臼盤の外に固定臼盤側にも圧砕球を設けたものであるのに対し、後者特許第一五九九一〇号製粉機に於ては鋼球(圧砕球)を固定臼盤と回転臼盤との間に介装遊嵌した二枚の穿孔鈑の間に渦巻状に配置し、固定臼盤と回転臼盤との両圧接部で圧砕作用をなすようにした点に於て差異はあるが圧砕球を環状に配置することは甲第一号証の特許第一五九九一〇号製粉機の明細書中に「………即ち同数の鋼球を同心円状に配置せられたるに比較し渦巻状の場合は原料が各鋼球を順次に経て全鋼球の作用を受け得るに対し、同心円状の場合は一の円列より次の円列に原料が送らるるに過ぎず………」と記載してあることから、ボール式製粉機に於て鋼球の取付方は不明ではあるがこれを同心環状に配置することは既に公知であると認められる。又特許願製粉機における圧砕球の自転並びに公転することについても特許第一五九九一〇号製粉機に於ては原料の多少によつて速度には遅速はあるが、公転しながら自転をなしその取付方も格別工夫を要するものとは認められない。又製粉能率を良くするためには短時間内に大量の穀粒を挽砕して製粉となすことにあるから、荒い穀粒を荒砕する部分は当然臼盤の刃の間隔を疎とし順次これを密となして挽砕するようになすことは、特許第一七三五九三号製粉機、登録実用新案第一八三七三号製粉機、昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号製粉機に於てもその設計に意を用いてあることが認められ、本件特許願製粉機の圧砕球を臼盤の外周に至るに従い疎より密となした点は同一の着想であるものと考えられる。従つて昭和二十二年特許願第五八五四号製粉機の要旨とする「関係的に回転する一組の臼盤の一方に穀粒が進入する中心部においては疎間隔に、そして周囲に至るに従い順次密間隔に多数の圧砕球を同心環状に配列設置すると共に、他方の臼盤の内面にはその周囲にのみ前記圧砕球の環列間に圧砕球を配置し、これ等の圧砕球を各臼盤から一部突出させて各自その位置に於て転動自在に保持して各その頂部をそれぞれ相手臼盤面に圧接して成る製粉機」は(一)特許第一五九九一〇号製粉機、(二)特許第一七三五九三号製粉機、(三)登録実用新案第一八三七三号製粉機、(四)昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号製粉機の各記載事項を綜合して、格別発明思想を要することなく設計によつて容易に連想し得る程度のものと認定する。』といい『然らば本件特許出願に係る昭和二十二年特許願第五八五四号製粉機は特許出願前国内に頒布せられた刊行物に容易に実施することを得べき程度に於て記載せられているものと認められ、新規な工業的発明とはいえないからこの理由により原告の抗告審判の請求を排斥した特許局の本件抗告審判の審決は相当である。』と断定した。

二、しかし右の判断は大審院の判例(後出)と相反するから原判決は破毀さるべきである。以下これを詳述する。

特許局引用の特許第一五九九一〇号製粉機は、その明細書図面によつて明らかな如く正に一組の臼盤の間に多数の鋼球を備えたものであるが、本願特許願製粉機は、唯単に上下の臼の間に球を挾んだものではなく、球(9)(10)は各臼(3)(2)に殆ど埋め込んで僅かに臼面からその一部を突出させたものに過ぎない。換言すれば一方の球(9)は下部の臼盤(3)に保持され、また他方の球(10)は上方の臼盤(2)に保持されている如く各所属の臼盤に装置され、各々臼盤の一部を構成するものであるから、これを指して一組の臼盤の間に多数の圧砕球(鋼球)を備えたものとは観念し得られない。

本願製粉機は、上述の如く球(9)は臼盤(3)に保持され、また他方の球(10)は臼盤(2)に保持されている関係上、臼盤の一方が回転すれば各球(9)(10)は各臼盤(3)(2)に対してその位置で転動する結果になるが、前記特許第一五九九一〇号製粉機では、鋼球(5)は渦巻状位置を維持して二枚の遊装穿孔板(6)(6)に支持されているから、鋼球(5)は回転をなし、決してその位置で転動することはない。

以上二点において全くその作用を異にせるに拘らず、原審はこの点を誤解し前記摘示の如く両者一致すと断じたのは明らかに違法である。

なお圧砕球を臼盤に埋め込んでその一部を突出させることはボールの支持方法として従来その例のない新規の点であるとともに、これ故にこそ本願では臼盤(2)に圧砕球(10)を周囲にのみ他方の圧砕球(9)の環列間に当つて配置する(この点も新規で公知のものにはない)ことができるという相関的関係があるのみならず、圧砕球の一部を臼盤から突出させて保持するということ自体は、臼間の間隙を大にすることなくして大径のボールを用いることができ、これによつて上下で交互に圧砕作用を行わせ得られる特徴があるものであるから、これらの点を考慮することなくして唯漠然と格別工夫を要するものではないと判断するのは違法である。

次に原審は特許第一七三五九三号製粉機、登録実用新案第一八三七三号製粉機、昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号製粉機(乙第一、二、三号証)を引用して説示する所あるも、これらの製粉機は総てボール式製粉機ではなく、粉砕用歯を設けた型式の製粉機でその型式が異るのみならず、歯の配置を中心部から周囲に向つて漸変的に粗から密に配置したことについての事実を観念し得べき客観的要素を具備していない。しかも本願の他の発明構成要件とする『他方の臼盤(2)に周囲にのみ圧砕球(9)の環列間に当つて圧砕球(10)を配置すること』及び『圧砕球(9)(10)を各臼盤(3)(2)から一部を突出させて各転動自在に容設して頂部を相手の臼盤面に圧接するように保つこと』の構想観念は引用の乙号証からは全然暗示し得られない点において、右は全く本願とは無関係の事例であると断ぜざるを得ない。寧ろ乙号証は種々の歯型が公知であるに拘らず、その一部改良によつて製粉機能を改善した点において別個独立の特許発明が成立することの一つの証左を示すに外ならないのである。

三、然り而して本件特許願はその明細書に記載するが如く、所期の目的達成のために顕著なる効果を奏していることは、検証の結果によるも明白にして、世上に未だ嘗つて現出せず、又何人によりても実施されたことがないのである。特許法第一条は『新規なる工業的発明をなしたる者は、その発明につき特許を受くることを得』と規定しているが、工業的発明とは何ぞやという問に対しては何等規定していないのである。数多の特許庁審決例、大審院判例できまつていることは『凡そ特許発明の要旨はこれを組成する個々の理念について観れば何れも任意に選定利用し得べき当然の事項に外ならず、又一般周知の事項をも包含するを妨げざるものにして、ただこれ等事項の綜合的の結果として著大なる工業的効果を生ぜしむることが当業者の容易に想到し得ざる所のものなれば、爰に新規の発明を構成す』(昭和十四年七月十九日判決、同十三年(オ)第二〇四三号)

『既知公知に属する個々の思想を集成し、一の考案をなしたる場合と雖もその集成の上に特種別様の点ありて新規なる結果を生ずるに於てはこれを因にして一の発明となすを妨げずとするも、その集成の結果が個々の思想の単なる総和以上に出でざる場合に於ては直ちにこれを発明となし得ざるや論を俟たず。これを要するに或考案が一の発明というに値するや否やは甚だ微妙なる程度論にして、固より截然たる分界のその間に存するありて爾るに非ず。畢竟技術上の判断に属しこれ亦事実認定の一態様に外ならざるものとす。』「昭和十二年九月十七日二民判決、同年(オ)第五七二号、法律新聞四一八二号)

『甲乙両種の装置の構造上の差が一見微差に過ぎざる観ある場合と雖も、これがためその工業的効果に著しき優劣の差を来たし、その差の基く所を以て単なる従来の装置の改良の結果とは思料し得ざるが如き場合に於ては、右構造上の差は則ち通常当業者に於て特別の考案を要せずして容易に想到し得べき構造上微差に過ぎざるものとして特許を招み得ざるものと解するを相当とす』(昭和十八年三月十九日判決、同十七年(オ)第八八四号、「特許と商標」昭和十九年二月号)

『発明の異同は必ずしもその考案を実施する設計構造、若しくは使用材料近似せるや否やのみに依りこれを決すべきに非ずして仮令これ等のものに於て相近似するところありとするも、その現わさるべき工業的効果に差異あるときは別異の発明を構成するものといわざるべからざるを以て、原審決が本件特許を以て公知に属する電気化学的発色用紙と同一発明なりとなさんがためには須くその工業的効果に於ても差異なく、新規性なきことを説示せざるべからず。然るに原審決は単に本願特許が公知に属する発色用紙とその組成材料に於て同一なることを説示するのみにして上告人が主として主張する工業的効果即ち引用のものよりも発色優秀なりとの点に付、使用薬品の割合及び発色用紙の使用法如何が如何に影響すべきやに言及する所なかりしは発明の類否を判断するに付未だ尽さざるものありと謂わざるべからず』(昭和十八年第七四七号)

『本願の考案にはその骨子とも見るべき「………の作用」を特有すること明らかなるを以てこれにより本願がこの作用を具有せざる前記援用の特許に比し、相当大なる工業的効果を齎すものならんには何人も援用特許より容易に推考して本願の如き考案を実施すべき筈なるにより、若しこれが実施をなす者なきに於ては本願考案が斯かる工業的効果を齎さざるがためなるか或は援用特許よりは容易に推考し得ざるがためなりと観察するを相当とすべし。故に叙上判示の下に於てはこの間の消息は須く審究を要する事項なるに拘らず原審決がこれを審究確定せずして、輙く叙上の断定を下したるは審理不尽に非ざれば理由不備にして破毀を免れざるものとす』(昭和六年五月二十一日判決、同五年(オ)第二五一九号、法律新聞三二七七号)

『凡そ工業的装置が同一目的のために存する従来のものに比し、その効果大にして単に従来の装置の改良と目し得ざる如き場合に於ては特許法第一条に所謂発明に該当するものと解するを相当とすべきが故に、原審は本件特許発明における工業的効果と前掲公知方法における効果とを対比し、果して叙上上告人主張の如き差異を認め得べきや否、若しこれを肯認し得べしとせば本件特許出願当時本件特許と同様の製造方法が要請せらるべかりしに拘らず、一も斯かる考案の現出を見るに至らざりしは即ち当時における前掲公知方法より当業者が容易に想到実施し得ざりしがために外ならざるかの消息に付須く検討を加え、以て本件特許がその出願当時新規なる工業的発明を以て目し得ざりしものなりや否に付首肯するに足る具体的説示を与うるを相当とすべし』(昭和十八年三月三十日判決・同十七年(オ)第六七二号、同十七年九月二十六日判決・同十六年(オ)第四四九号・「特許と商標」昭和十八年一月号、同十九年十一月二十八日判決・同十八年(オ)第七九〇号・「審決公報」九〇号)。

本件についてこれを見ると、本件特許願の明細書の「発明の詳細なる説明」の項において次の記載がなされている。

『本発明は、以上のように圧砕球による製粉作用を行うに当つて圧砕球を各臼盤に装置し、その一方は中心部より周囲に至る程圧砕球の配置密度を密にし、他方は周囲部分において相手の臼盤の圧砕球列間に位するよう圧砕球を配置したから、穀粒の圧砕程度と、圧砕球の転動速度及び配置密度関係とを合理的に調和し得て、能率よく製粉作用を行い得る特色があると同時に、周囲部分においては相当微細化された資料を密に配置した上下の圧砕球の関係によつて処理するから平均に、しかも迅速に多量の資料を充分に微粉化し得る点において頗る有効なものである。従つて各種穀類の製粉に適切なることは勿論、圧砕作用によるから小麦などは微細に製粉できるもそのフスマなどは細かく摩砕されないから、篩にかければ容易に極めて良質の粉が得られる利益がある。』

以上の如く本件特許願の発明は一定の効果が存することは明白であつて、且つ又従来かかる製粉機が存したという事実並びに公知の文献等もないのである。然るに原審は頗る縁遠い乙号証(特許明細書、実用新案公報)を漫然採用し、本件特許出願に係る製粉機は『新規な工業的発明とはいえないから』抗告審判の審決は相当であるとの判決を下したのは、全く前示の各判例背反の措置であつて原判決は到底破毀を免れないのである。

第二点

一、原判決は、その「理由」後段において『又製粉能率を良くするためには短時間内に大量の穀粒を挽砕して製粉となすことにあるから荒い穀粒を荒砕する部分は当然臼盤の刃の間隔を疎とし順次これを密となして挽砕するようになすことは特許第一七三五九三号製粉機、登録実用新案第一八三七三号製粉機、昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号製粉機に於てもその設計に意を用いてあることが認められ、本件特許願製粉機の圧砕球を臼盤の外周に至るに従い疎より密となした点は同一の着想であるものと考えられる。従つて昭和二十二年特許願第五八五四号製粉機の要旨とする「関係的に回転する一組の臼盤の一方に、穀粒が進入する中心部においては疎間隔に、そして周囲に至るに従い順次密間隔に多数の圧砕球を同心環状に配列設置すると共に他方の臼盤の内面にはその周囲にのみ前記圧砕球の環列間に圧砕球を配置し、これ等の圧砕球を各臼盤から一部突出させて各自その位置に於て転動自在に保持して各その頂部をそれぞれ相手臼盤面に圧接して成る製粉機」は(一)特許第一五九九一〇号製粉機、(二)特許第一七三五九三号製粉機、(三)登録実用新案第一八三七三号製粉機、(四)昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号製粉機の各記載事項を綜合して格別発明思想を要することなく設計によつて容易に連想し得る程度のものと認定する』と説示する(この認定が誤りであることは既述した通りである)。

二、しかして前記引用に係る

一、特許第一七三五九三号明細書並びに図面(乙第一号証)に記載せられた製粉機、

二、登録実用新案第一八三七三号説明書並びに図面(乙第二号証)に記載せられた製粉機、

三、昭和六年実用新案出願公告第一〇六五五号説明書並びに図面(乙第三号証)に記載せられた製粉機、

は被上告人(被告)が原審・東京高等裁判所で始めて主張立論し、乙号各証を原審で始めて提出したのである。しかし特許局抗告審決の取消請求事件では原審において斯かる新主張及び新証拠を提出することは許されないのであつて、これを採用の上判断に供した原判決は違法として到底破毀を免れないのである。詳言すれば特許局抗告審に顕出されない事項の主張とその証拠とは特許出願拒絶の理由として、東京高等裁判所へ提出できないのである。けだし特許法第百二十八条ノ二の第四項によると、特許願の拒絶査定事件の訴は抗告審判を経て来ないと提起できないのである。しかるに被上告人(被告)の乙第一、二、三号証は抗告審判において本願拒絶の原因とされざりし事柄であるから、即ち原審で主張し得ないのである。この点は同法第百二十八条ノ五をみるも了解し得られるであろう。即ち裁判所は請求が理由ありと認めたときは審決を取消すのみで、さらに進んで実質的の判定はできないのである。取消された上は抗告審判官が『さらに審理を行い審決』をなすのであつて、技術上の判断は必ず一度は特許局の抗告審判を経て来る立前になつているのである。

上告人は原審において以上の主張を力説した(昭和二十五年二月十八日附第二準備書面)にも拘らず、原審はこれに対し何等首肯するに足る説示を与えなかつたのは審理不尽、理由不備にしてこの論旨は『法令の解釈に関する重要な主張を含む』ものと確信する。

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